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漫画、アニメ(主に最遊記、ジャンプ、進撃の巨人)の感想。音楽(ラルク/hyde/HYDE)猫、カメラ等、煩悩上等日記。
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─なんだかんだいって便利だよなぁ。
不健康な蛍光灯が照らす店内を見渡す。一目散に酒販コーナへ。
ビール数本と日本酒を抱えレジに向かう。無愛想な店員がいらっしゃいませの言葉もなく心底面倒くさそうにレジに通していく。
ボソリと合計金額(1540円)をいい袋詰めをする。二千円払い釣りをもらう時初めて視線が合う。
‥‥しかめっ面。ここまで無愛想だと逆に清々しい。きっと独りで酒なんぞ買いにきてさみしい女だとか思ってるに違いない。当然ありがとうございました。の言葉もなく奥に引っ込もうとするバイト君に一際大きな声で、ありがとー!といい(ギョッとしてた)店を後にした。

急に暗がりにでると目がぼやぼやする。少し遠回りする事にした。
んぁーつまみも欲しかったなぁーでも結構高いんだよーあっ、駄菓子という手もあったな。いいつまみになるんだよ‥よっちゃんいかとか‥悶々‥
ふらーりふらり路地裏を通り抜けているとぼんやりと浮かび上がる看板が見えた。


─浦原商店─


そういえばあったなそんな店。何度か利用したことがある。ヘンテコな店で雑貨店であるらしいがなんでも揃っている。以前どうしても蒸し器が欲しくなり(今風のおしゃれな感じのではなく、四角くて底敷きの下に水を入れて使うやたらでかく鈍感な感じのやつ)方々探したが見つからずダメもとに入ったあの店に普通に置いてあったのだ。

電気がついてるってことはまだやっているのだろうか?扉も少し開いている。しばし諮詢したが虎穴に入らずんば虎子を得ず。と自分に言い聞かせそっと扉に手をかけた。

「ごめんくださぁーい」

‥‥

「お邪魔します、よ?」

返事はないが別に盗みに来たわけではない出てきたらお勘定すればいいんだし、と駄菓子コーナーを凝視する。
460円と一円と五円玉が数枚か。悩むな。こんなに悩むのは小学生の遠足のお菓子を買う以来だ。
手に取っては変え、うーんうーんと唸っていると突然背後から間の抜けた声が響いた。

「まいどぉ~」

心底驚きガバリと振り返ると飄々然と長身の男が突っ立っていた。

‥‥怪しい。どっから降って湧いて出た?ってか誰?!
深緑の作務衣に黒い羽織。足下は下駄。おまけに目深に被った悪趣味なストライプの帽子のせいで表情が見えず怪しさ拍車をかけている。
真にもって怪しいことこの上ない。

「お主、何奴!?」
などと言えるはずもなくじとーっと張り付くように見ていると察したのか

「どうもぉ、ワタシここの店長をやっております、浦原と申します。以後お見知りおきを~」と名乗った。

いやはやここの家主殿でありましたか。なるほど納得がいく。怪しくて雑然としていて意表をつく品揃え。それがそっくりそのままだ。
怪しいといえば私も相当なところだと思い事の次第を話そうと口を開きかけると、

「いやぁー月見酒っスかーいいっスね。肴をお探しで?」

「やや、何故分かった?お主エスパーか?!」
などと言えるはずもなく目を丸くしていると口元で広げていた扇子をパチリとしめると、つつ、とだらしなく下げた私のレジ袋を指しニヤリと口元をゆるめた。

「‥はぁ‥まぁそんなとこです‥」
恥ずかしいことこの上なくもぞもぞしていると

「んじゃ~ちょっと上がっていきませんか?」

‥?はて、今なんと?なんでそうなるんだ。
あっけにとられ目を細めると(恐らく睨んでた)

「団子もあるっスよ」
などと勝手に話を進めていく。
「ささ、どーぞどーぞ、ずずいと奥まで」
などとたたみかける。あまりにそれが自然すぎたもんでつられて、

「やぁ、こりゃすいませんなぁ、ではではお言葉に甘えまして‥」と靴を脱ぎ上がり込みそうになる始末。片足乗せたとこで、いやこりゃいかんだろうと思い首を上げ視線を合わせるととぼけた風の薄色の瞳とぶつかった。

─あ、タレ目。

‥まぁあれだ、毒を喰らわば皿までだ。と足をかけた状態で男にグーにした右手を突き出す。首を傾げこちらを見ていたがなお男の方に突き出し「手、出して」と言うと一層首を傾げしかし素直に出した白く骨ばった手にジャラリと小銭を手渡した。先払い、しめて468円。

「じゃあそれで」と言いズケズケと勢いよく上がり込んだ。
後ろで笑っている気配を感じた。

===
通されたのは極普通の茶の間でテーブルには溢れんばかりの団子が山積みに。その周りをサングラスをした強面のマッチョ(でも礼儀正しい)と泣き顔の女の子とやんちゃそうな男の子がいた。
彼らは見たことがある。ここの店員さんだ。ちぐはぐだけどそれもこの店らしい。

「誰だよその人!ってあー!いつも変なもん買っていくやっ‥」 と言い終わらないうちにテッサイさん(さっきのマッチョさんの名前)にげんこつをくらう。
私は内心変な物って‥と思いながらチラリと店長さんをみると「あははー賑やかッスね」と言いながらスイッと襖ひいた。

そこは縁側になっており月も真上にかなりの特等席だった。私は余所様の家というのも忘れ嬉々と
「うわぁーいいねーいいねー」と陣取りお酒を広げ月見酒を堪能し始めた。

===

─とまぁ長くなったがこれが今に至るまでのざっくりとした経緯である。しばらくわいわいとみんなで騒いでいたがテッサイ氏の「夜更かしはいけませんな」の一言で子供達は強制就寝となった。「なんだよ、店長だけズルイじゃんか!」とゴネたジン太もげんこつ一つで引き下がった。
なので今は店長殿と二人きり。妙な事だ。二人ともほとんど無言で酒をあおり月を愛でる。でもそれが心地よい。何故か馴染んでしまう。
買ってきた酒は瞬時になくなり厚かましくも他に酒を出してもらった。それも空になりつつある。月もかなり傾いてきた。くいっと盃の残り酒を飲み干し隣の男をみる。

色素の薄いぼさぼさの髪が月明かりに照らされ更に薄く透き通って光って見える。この世界の人間ではないようだ。まるで月世界の人間のよう。得体の知れない、届かない感じ、近いようで遠い感じ。この人の事は本当に何にも知らないんだけれど。
そういえばさっき触れた手は冷たかった。
やっぱり月の人間だ。目がぼやぼやしてきた。
月が消えればこの人も消えてしまうのだろうか。

─あぁぼやぼやする。

「店長さん、宴もたけなわって事でそろそろお開きに‥」
と切り出す。
「ありゃ?酔っちゃったんスか?」

「いやいや、月ものれんを下ろし始めてますし」

「それもそうっスね。んじゃ送りましょうか」

「いえいえ、お構いなく」だって月が沈む。その前に早く戻りなよ。あそこに帰るんでしょ店長さん

「はい?」

「えっあっ、何でもないです。すぐそこなんで大丈夫です」と慌てて取り繕い何度も送ると言ってくれた店長さんをやんわり断り表に出る。

なんだか寒さが増したように感じる。変なの。
腕振って大股で歩く。
空にはまだ月が残っている。もう着いたかな店長さんは。ぼやぼやと歩き続けた。私が家に着いたときふと天を仰ぐと月は白んできた空に溶け込んでいった。

なんだ。結局家まで送ってもらっちゃったなと思いながらベッドに倒れ込む。体がぼやぼやする。

468円の妙な夜。月世界人と遭遇。月見酒。

私のぐうたらDAYはこうして幕を閉じた。


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はい、お相手は喜助でした。てか長くなった。まとまりないけど書いてて楽しかった。これシリーズ化しようかしら?喜助夢。ではではお粗末様。

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無題
喜助だったんだ!
いや~やっぱりいいよ!
ダーリンすげーゃ!
是非シリーズ化して下せぇ(´艸`)
通勤帰りにふと見上げた十三夜の月を思い出しちゃった。
Posted by 弥勒 2007.10.27 Sat 10:57 編集
褒められた!?
そうです、喜助の旦那でした~。
ありがとでやんす。まぁシリーズ化するかわかりませんが単発でちょくちょくやろーかな。なんて。
2007.10.28 Sun 07:42
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機械に疎くアナログ派。図書館に住みたいと思っている若干活字中毒者。放浪癖あり。呑み助。あー民。 
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