想いの行方

五月二日。
うちはこの日をこれからも忘れないだろう。

今でも納得してないというか釈然としていないというか。

あの日から毎年この日は横須賀に出向いていたのだけれど一昨年あたりから行けてない。

─この日やる事は決まっている。

まず、煙草を吸う。もちろん彼が愛飲していたものだ。普段自分が吸っている銘柄とは違うので軽い違和感と目眩を感じながら。

何処に行ってもたんやろ？遠いねー。とかなんとかぼそぼそ呟いてみる。
彼は何処に行きたかったんやろ？それとも何処でもない場所に行きたかったんやろか？…考えてもしゃーないか。

以前は花も手向けていた。白い百合の花。彼の好きな花。
でもやめた。もう十二分に悲しんだんやから。
綺麗で華やかでだから逆に淋しい。逝ってしまった人に花を贈るのは変な感じだ。

彼の好きやったもので埋め尽くしてみて馬鹿馬鹿しい。と自分でも思っている。全くもって。
なので煙草のみにした。まぁお酒も呑むんやけれど。

なんだかんだ言ってやることはこんだけだ。後は普段と同じ過ごし方だ。何も変わらない。日々はとどまることなく流れているのだ。恙無く。



─…えーなにガラでもなく感傷に浸ってんの？ってツッコミが聞こえてきそうですね。うーむ。当時もそうやったけどあまりに衝撃的な事にあうと悲しいとかそういった感情というものは吹っ飛びますね。
ま、自己防衛ってことなんかな？でもあとからきますけどね。ふとした瞬間、何気ないときに、ね。

さて、らしくもないこと書いたあたいはこれにてドロン。ちなみに写真はうちの散歩コースのひとつのベンチの上にある藤棚です。キレイな紫で咲き誇っていたのでパシャリ。雨なのもまた好し。